平成14 (2002) 年度「文化論コロキウム」発表記録
  

 

 

テーマ&要旨2002年06月21日 (金) 13時09分 電子掲示板投稿

 

  

 今回のコロキウムでは捕鯨について考えてみたいと思います。今、iwcにおいて捕鯨が全面禁止になろうとしています。日本はそれを何とか阻止しようと必死になっています。鯨食は日本の食文化のひとつであり、それがまったく無くなってしまうというのは寂しいと感じている人も多く、また鯨で生計を立ててきた人たちもいます。しかしなぜ捕鯨がここまで反対されるようになってしまったのでしょうか?iwcの推定によると、その数が懸念されているのは数種類だけであり、そのほかにおいては少ないどころかむしろ増え過ぎているものさえある状況です。にもかかわらず捕鯨はほとんどの国で反対されています。その理由として、鯨は野生の動物であり、また高い知能を持っているということなどが上げられます。
 ここでは捕鯨反対・賛成それぞれの主張を見ながら、日本が捕鯨を再開できるかどうかについて考えていきたいと思います。

 

 

 



発表報告2002年07月10日 (水) 11時39分 電子掲示板投稿

文化論コロキウム報告書

テーマ『商業捕鯨は再開できるか?』
発表日 6月27日
発表者 小山信太郎 杉浦幸恵 高橋史子
指導教官 佐竹正一先生

 

○レジュメの要約 

 反捕鯨側の主張としては、(1) 鯨は絶滅の危機に瀕している。(2) 鯨は知能の高い動物である。(3) 鯨製品には全て代替品がある。(4) 鯨は養殖できない。(5) 捕鯨は海洋の生態系を破壊する。(6) 鯨の捕殺方法が非人道的である。(7) 捕鯨は倫理に反する。(8) 捕鯨禁止は世界の世論である、が挙げられ、これらの主張は年々変わってきている。
 それに対し、日本は (9) 科学的調査によると、捕獲対象となる鯨の数は十分である、(10) 増えすぎた鯨が魚を食べ、漁業資源が減少する、(11) 鯨食は日本の文化である、(12) 世論調査によると、日本では捕鯨を無くすべきでないという人が多い、と反論している。日本において、鯨は食用としてだけでなく、宗教的、社会的にも重要な存在であった。

 

○質問

・発表者の主張は?
 鯨食は日本の文化であり、残していきたいので捕鯨は禁止するべきではない。また、反捕鯨側に見られる鯨の特別視が理解できない。

・日本の鯨文化は今もあるのか?鯨を捕りにわざわざ北極や南極まで行く必要性は無いのでは。
 あるとはいえないが、日本独自の文化として次世代に残していく必要があるのでは。

<反論>しかし実際に鯨を食べたいと思っている人は少ない。調査捕鯨で捕った鯨で充分ではないか。               

・鯨を殺すことは倫理的によくないという反捕鯨側の主張があるが、鯨=人間か?
 鯨=人間ではないが、鯨は知能が高いという考えがあり、人間と同等視する傾向がある。しかしそれは単に鯨の脳が他の動物に比べて大きく、人間の脳に似ているということによるものであり、その知能の高さを証明するものはないし、人間ほどの知能を持っているという根拠もない。

・日本以外で鯨文化が発展していた地域はないのか?
 ノルウェー、アイスランド、アメリカ(イヌイット)、東南アジアetc

・ テーマの設定について、「再開可能か?」というのは推測なので、「再開すべきか?」にしたらどうか。
 前者を論じる際には、後者の問題も必然的に出てくると思われるので、それも含めて議論することにしてはどうか。

 

○議論内容

<論点>商業捕鯨の再開は可能か、不可能か?

意見

・日本の伝統文化である鯨食について他の国から文句を言われる筋合いはないが、かといって今本当にそれが必要かと言われると無くても困らない。調査も曖昧で、絶滅しないという根拠は無いので商業捕鯨には反対。

・水産庁による捕鯨に関する世論調査では70%の人が捕鯨を再開すべきという意見であったが、アンケート自体が誘導尋問的であるためあてにならない。

・イヌイットの民族的伝統捕鯨を許可するという案に対し日本が反対。日本が認められていないのに他が認められるのはおかしいという理由だが、日本も文化として認められることを望んでいるのだから反対するべきではなかった。→文化という理由で説得するのは無理だろう。

ここで一つの疑問・・・科学的には反捕鯨側の主張は論破されているにもかかわらず、それでも捕鯨を認めようとしないのはなぜだろうか?

 

○結論的意見『捕鯨禁止運動は動物愛護の精神によるものである』

 動物愛護の考えは世界に広まっており、反捕鯨はその象徴とされている。これに対してどんなに科学的根拠を出して説得しようとしても互いの意見がすれ違うだけである。「捕鯨は日本文化」という主張もこの考えを覆すには弱いものである。
 確かに鯨の捕殺方法の凄惨さや、鯨は養殖できないということなどを考えると、動物愛護の動きはますます強くなるだろう。このことから考えて商業捕鯨を再開させることは難しい。それだけではなく、現在行われている調査捕鯨も、日本が反捕鯨派を納得させるような主張が無い限り、禁止されるだろう。(もしできるとしたら、鯨を養殖する技術を開発したときか・・・)

 

○ 反省

・IWCの説明よりも、反捕鯨・賛成派について、もっと細かく説明すべきだった。
・ 論点が議論しにくかったかもしれない。
・ 現在、日本に鯨文化はどれだけ残っているのかもう少し詳しく調べるべきだった。

今回の反省点を、次の発表に活かしたいと思う。