平成14 (2002) 年度「文化論コロキウム」発表記録
  

 

 

テーマ&要旨2002年07月08日 (月) 20時33分 電子掲示板投稿

 

  

 なぜ日本で高級ブランド品が受け入れられたか?

 若い女の人がよくブランド持っているのをよく見ますよね〜!
 みなさんはブランド品を持ちたいと思いますか?いまだに不景気を抜けきれない日本社会で、高級ブランド品が流行っているのはなぜなのでしょうか?その現象をどうとらえますか?高級ブランド品の魅力は?その謎がコロキウムで解き明かされる!!

 

 

 



発表報告2002年07月19日 (金) 19時56分 電子掲示板投稿

文化論コロキウム報告書

テーマ 「ブランドを多くの人が持つのは何故か?」
発表日 7月11日 G41教室にて
発表者 木村佳世 能戸敬子 並河理史 本宮未樹
指導教官 後藤尚人

参加者21名、配付資料21部(用意した分は35部)。司会者の小林先生から1人当たり1部の資料が配付された(ブランドについて)。たくさんの意見交換がみられ、議論も盛り上がり大変嬉しく思う。

  

レジュメ要約

1 ブランドについて

 ブランド(brand)とは同一カテゴリーに属する他の製品(財またはサービス)と明確に区別する特性、すなわち名前、表現、デザイン、シンボルその他の特徴を持った製品。法律上のブランドの名前に相当する用語は商標(trademark)である。今回の議論で扱ったブランドは海外高級ブランドに限定した。 
 ブランドはまず、ある商品が売れ、その名前が社会に出てくる。一般に広く知れ渡り、ブランドが出来上がる。ブランドとして知られるようになると、ブランドが消費者に安心感を与え、両者の間には信頼関係が生まれる。ブランドとして継続するためには新作を出す等して努力をしている。
 ブランドの機能は、1) 商品識別 2) 品質保証 3) 宣伝広告 4) 出所表示 の4つである。さらに高級ブランドには、他者にステイタスを誇示する機能もある。

 

2 日本におけるブランドブーム(1960〜1995)

《社会的背景》
1960年代 ミニスカート流行
1970年代 ワンポイントウェア全盛 第1次ブランドブーム(ヴィトン登場)  
       有名ブランド商品の偽物横行
1980年代 田中康夫『なんとなくクリスタル』 ブランド信仰ピーク DCブランド大人気
1990年代 高級ブランド不振 シャネラー

[他の流行との違い] 
 ’60年に流行ったミニスカートは、ミニであればどこのブランドのスカートでも良く、「このブランドでなければダメだ」という海外高級ブランドブームとは明らかに違う。1980年代後半に起きたバブル景気崩壊から高級ブランド不振に陥るが、その後「シャネラー」の登場からも解るようにブランドは復活している。その背景を探るため、海外旅行者数や経済状況等を調べてみた。

《経済的背景》
 日本人海外旅行者数と年代別為替相場を照らし合わせてみると、1985年のプラザ合意による円高の影響で日本の海外旅行者数は急激に伸びている。1995年は円高80円を記録した年で旅行者数も前年より2,000人程増加している。円高によって海外旅行に行きやすくなり、旅行土産として買ったブランド品が日本に持ち込まれ、国内で一般化したと考えられる。また海外の輸入品が安くなる、つまり、高級ブランド品も多少安価になり多くの人にとって買い求め易くなった。また、日本において高級ブランドを持つのは若者がほとんどである。親のもとにいる学生や「独身貴族」を例として、若者は不況には関係ない。よって高級ブランドは、・海外旅行者数の増加 ・変動相場制への移行 ・不況知らずの若者 の3つの経済的要因に支えられているため、現在も売り上げが伸びており、不況に関係ないと言えよう。

 

3 論点:何故多くの日本人がブランド品を持つのか?

 この論点に対する私達の考えは以下の4つである。

・西洋への憧れ
  明治以降から続く西洋への憧れ(西洋志向)が未だに人々の根底に残っているのではないか。

・同化意識
  「周りの人が持っているから」「あの芸能人が持っているから」という理由で買ってしまう。

・宣伝効果の成功
  ファッション雑誌等の特集や街頭の看板など日本では宣伝による効果も大きいのではないか。

・ストレス解消法
  抑圧される事の多い現代日本社会ではストレスがたまり、それを契機として普段から欲しいと思っていた少々値の張るブランド品を思いきって買ってしまうのではないか。

 

議論の流れ

 ブランドと高級ブランドの定義の違いがあいまいであったために、話がユニクロやコカ・コーラ等の話にまで及んでしまった。フランスと日本を比べてみると、フランスでは高層階級の人が高級ブランド品を持ち、日本では若年層、庶民が持つことがわかった。論議で一貫して言われていたことは、ブランドを買う人はそこの商品を買うというより、名前を買っているということだった。その要因としては、私達が提示したこと以外にやはり日本の国民性─集団主義であり個性がない、模倣がうまい、他者意識の弱さ─が挙げられた。みなさんに「高級ブランド品が欲しいか」と尋ねたところ、欲しい人は、持つことによってステイタスが上がるから、自己満足するという意見で、欲しくない人は、みんなが持っていてあまりそのものに価値を感じない、他人と違うことに優越感を感じるといった意見がみられた。

 

結論・感想

 今回の議論で高級ブランドには、他者にステイタスを誇示する働きがあることを改めて強く感じた。みんなが認める高級ブランドや最近流行りのブランドのものを身に付けていたら、おしゃれと思われるという、持つ側の優越感は絶対である。だから、人はブランドを求めるのだろう。ただ高価であるからとか、デザインがいいからだけではなく、あくまでもみんなが認めるブランド知名度があるからこそ、人の目を引く。それを手にすることで自分のステイタスを上げてみせることがで きるのだ。しかし、日本人の全てがそのような理由で高級ブランドを持っているとは限らないが、その一方でみんなが持っている高級ブランドで自己を主張するのではなく、他者と違うもので自分を主張する人も多くなっていることも見逃してはならない。また、日本における高級ブランドの価値はブランド自身だけではなく、消費者自身の価値観が多分に付加されている、という印象を受けた。

 

参考資料

月刊アクロス編集室『ストリートファッション〜若者のスタイル50年史〜』Parco出版 1995
井手幸恵『ブランドと日本人〜被服におけるマーケティングと消費者行動〜』白桃書房 1998 
石井淳蔵『ブランド〜価値の創造〜』岩波新書 1999
大石尚『一流ブランドの魔力〜名品を創る人々を訪ねる井旅〜』光文社 2001

梅木FP事務所 http://home.catv.ne.jp/dd/fo_umeki/m0020/kawase_sooba.htm
国際観光振興会 http://www.jnto.go.jp/info/html/m.html
My Vuitonn http://www.my-vuitton.jp/rekishi.html