平成15 (2003) 年度「文化論コロキウム」発表記録
  

 

 

テーマ&要旨2003年11月21日 (金) 17時18分 Web 掲示板投稿

 

  

 次回(11月27日)のコロキウムのテーマは、

  「『定年制』を考える」です。

 先日行われた総選挙、いろいろ波乱がありましたが、その波乱の一つであった「中曽根定年問題」を皆さん覚えていらっしゃるでしょうか?
 小泉首相が自民党の候補者選定基準に基づき中曽根・宮沢両元首相に立候補辞退と政界引退を求めたことに中曽根氏が強く反発、マスコミなどに大きく取り上げられました。

 次回のコロキウムでは、この問題をきっかけに、「定年制」は必要なのか、そもそも定年制とは何なのか、ということを考えていきたいと思います。

 



発表報告2003年12月18日 (木) 16時50分 Web 掲示板投稿

 

 

 コロキウムO班報告書

 テーマ:「定年制」を考える
 発表日:2003.11.27
 発表者:佐々木哲也 高橋真友子 本宮未樹
 担当教官:杉浦直

 

1.動機と論点
 小泉首相が、中曽根康弘氏に年齢を理由に立候補辞退と政界引退を求めたところ、中曽根氏が反発した、いわゆる「中曽根定年問題」から、年齢を基準とし能力を評価しない現在の日本の「定年制」には問題があるのではないかと思ったことをきっかけに、定年制を否定するアメリカの退職制度の歴史や日本における隠居慣行を参考にしつつ、論点を「『定年制』は必要か」とし、定年制の意味を探っていこうと思った。

2.発表の内容
 きっかけとなった「中曽根定年制問題」とその経過、考える材料として、日本と現在定年制のないアメリカ2国の定年制の歴史、定年制と関連のある習俗だと思われる日本の隠居慣行、以上3点について述べた。

3.論点についての意見
 その社会なり組織を存続させるためには、できるだけ多くの若者に技術や仕事のノウハウ、慣習などを受け継いでもらい世代交代しなければならず、そのためには、入る若者の分年長者が出る必要があり、また、日本のような年功序列社会の場合、年長者の権力が強くなりやすい環境にあるため、権力の過剰な増大を防ぐためにも定年制は必要であると考えた。

4.議論の内容
 論点について討論するにあたって、まず定年制のメリット・デメリットや、日本に定年制がある理由を考えてみることになった。特に後者についての意見が多く得られ、主なものとして、日本には年長になるにつれて賃金が高くなる給与形態があり、なかなか辞めないので、定年制を利用して強制的に辞めさせる必要があること、アメリカのように自由を優先させるのではなく、経済的平等を日本は尊重しているために定年制があるといった点が挙げられた。定年制を否定する意見は出なかった。
 そして、話は日本の定年制の将来へ移っていった。バブル崩壊後、定年制でうまくいっていた時代は終わり、組織によっては能力給をすでに取り入れているところもあるが、能力給だけでは経済的に苦しいために、定年制+能力給になるのではないかといった予測がされた。
 最終的に、日本における定年制は良いとか悪いとか一概に決められるものではなく、社会がある意味で必要としていたものだったが、それだけではうまくいかなくなった今、日本は新たな給与形態、退職について模索している時期であるということが分かった。

5.感想
 日本人が仕事にこだわるのは、日本人には仕事をしなくてはならないという考えが根強いからだと思っていたが、現在では年金制度が充実していないため退職後の生活が苦しく、辞めたくても辞められないという理由があることが分かった。私たちが事前に話し合ったときは、どちらかというと雇用者の立場からしか考えていなかったが、被雇用者の視点があることを忘れてはならないと思った。
 討論を経た後改めて考えてみたが、やはり、定年制は世代交代をはかる潤滑油の役割を果たしていると思うので、ある種の定年制は必要だという意見は変わらなかった。