文化論コロキウム I班報告書
テーマ:売春は労働か? 発表日:2006年02月02日
J班 : 漆舘智子 菊池美穂 澤田萌 セツイン 松岡知世 宮川一恵 指導教官 海妻径子
1 論点
売春を労働として認めるべきか否か。※売春の倫理的是非を問うわけではない。
2 売春・労働の定義
「売春」とは、対償を受け又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。(売春防止法第二条)
ここで言う労働とは市場労働※のこと。ボランティア、無償労働は含まない。
※売り手と買い手が存在し、市場でまるで一つの「商品」のように売り買いされる労働。労働は、労働時間、労働量、熟練度などにより計算され、それに応じて代価が支払われる。労働は、市場競争に曝される。(『ジェンダーの社会学』)
3 コロキウム流れ
(1)質問
・非合法の売春が増えるとはどういうことか。
ドイツやオランダでは実際に合法化によって非合法が増えた。警察の目を緩める効果をもたらす可能性大。
・J班の立場の「労働条件を変える」というのは、どういう条件に変えることを言っているのか。
暴力を振るわれたり、売春者が望まない性行為を強要されたりした場合、訴えたり、拒否する権利を与えるということ。
・J班はなぜ売春者の人権が認められていないと判断したのか。
池袋事件(ホテトル嬢がナイフで脅され、正当防衛で、その客を刺殺した事件)で、正当防衛が認められず、有罪判決がでたことから。
・合法化しても、非合法が増えるという意見があるが、それでもJ班は合法化すべきと考えるのか。
とりあえず合法化しないと、今働いている人の状況がよくならないので。
(2)合法化に対する賛成・反対
賛成
・大人が自分で売春を選んでやる分には認めてよい。(援助交際を含めるなら認めるべきでない)
・合法化すべき。オランダやドイツのように社会保障が受けられるようになるならよいのでは?
・自らすすんで選択する人がいるなら、労働である。その労働の社会保障がなっていないなら認めるべき。
・「何らかの事情によってせざるを得ない時に自分はするのか?」と考えてみた。「5分の3人はやるかも」と答え、5分の2人はやらないと答えた。自分がやろうと思ったら、労働として認めてほしいと思う。
反対
・合法化していいとはいえない。
でも売春する人の人権は認めるべき。合法化されても、非合法へ行く人がいるなら、また人権が認められなくなる。本当に考えなくてはいけないのは、借金や生活苦に走らざるを得ない女性がいるという社会状況の方だ。
(3)議論
1)本当に合法化すれば状況はよくなるか。
賛成:日本は人身売買大国。合法化で彼女らの人権が認められるのではないか?
反対:合法化されたら本当に解決するのか?
例えば「15歳以上は売春を認める」という法律で、売春を認めるとする。すると、15才以下に価値がつくようになる。合法化すればよくなるという単純なものではない。
オランダは弱いドラッグを認めているが、それはさらに強いドラッグに手を出さないようにさせるため。禁止しても欲として残って、地下にもぐるよりは認めたほうがいいという意見。つまり、積極的には認めていない。本当に合法化してよくなるとはいえない。
→認めていた時と認められなくなった後で何か変わっていったのか?
米軍の日本人女性に対するレイプ件数は、特殊慰安施設設置時は1日40件。閉鎖後は1日330件。
→では、合法化するということは公娼制を復活するということか?
反対:江戸の吉原は合法化して売春を認めているが、レイプと実態は変わっていない。それでも認めるのか?
賛成:オランダは、斡旋するのは禁止しているので、搾取することがなくなるのではないか?
反対:公娼制になったら、搾取はなくなるといえるのか?
2)非合法にすることでの弊害
反対:売春と他の労働が違うのは、売り手が心の傷を受ける。売春によってそういう傷を受けないように、売春を防止する。そして非合法にしてもっとまともな仕事につける方向に持っていく。(そのための援助や保障もつける)
賛成:売春はよりまともでない仕事だという認識になるのでは?そして、売春をなくすべきだという方向になるのではないか?なくすべきとなって、性産業がなくなったら、性犯罪が増えるのではないか?
反対:性産業によって、男性の性的欲望が大きくなっていく。
賛成:米兵の性犯罪件数が慰安所ありと閉鎖後で増えた。それと関連付けるとおかしくなるのでは?
3)売春者に対する偏見や差別の問題について
反対:職業には「誇り」がある。貶められる仕事があるのはよくない。「買春男は相手のいない可哀そうな男。その男のケアをしている崇高な仕事である。」ということにはなっていない。合法化すれば売春が増える・減るという議論は本質的でない。
アンケートから風俗嬢は借金があったからこの仕事に就いたと言える。また、大学生のアンケートを見ると、売春に対する偏見がまだある。合法化しても偏見はなくならない。
賛成:労働として認めたことで偏見がなくなる足がかりになるのではないか。オランダ、ドイツでは合法化されていても偏見はあるが、それを変えるために様々な活動がされている。
反対:売春を推奨する風潮をつくっているが、売春はプラスイメージで捉えてよいのか?(これは倫理的な問題なので問わない)
4)性という商品は他の商品と同じか?また、商品にできるのか?
(この問題は時間切れで議論はできなかった)
4 感想と反省
論点に対して始めは売春の合法化に賛成する意見が圧倒的に多く、意見に偏りが出てしまったことが残念だった。議論が意図しない方向へとんだが、学生からの意見が多く議論が活発になった点は良かったと思う。
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