文化論コロキウム F班報告書
テーマ:「なぜ?どうする?パラサイトシングル」
発表日:2005年12月8日
発表者:阿部奈穂子・佐々木郁江・高橋健・橋本幸・蒔田信頼・杉浦幸恵
指導教員:杉浦直
1.問題提起
数年前、『パラサイトシングル』は日本で社会現象として注目を浴びたが、当初はパラサイトする若者への批判的な意見が多かった。2002年度後期のコロキウムで議論された際も、“若者の甘え”が原因であるという結論に至った。しかし、パラサイトシングルについての議論が深まるにつれ、パラサイトシングルを取り巻く社会状況に問題があるのではないかと思い、パラサイトシングル増加の原因を探っていこうと考えた。
2.発表内容要約
はじめに、パラサイトシングルの定義の紹介と、議論に当たってのF班の定義を説明した。次に、パラサイトシングルの状況・動向についてデータを用いて紹介した。その後、パラサイトシングルの増加がもたらす問題を説明し、論点と考察を述べた。
3.論点
なぜ、パラサイトシングルは増えたのか?
4.F班の考察
(1)晩婚化・未婚化
(2)少子化
(3)親子関係の変化
(4)失業率の上昇
5.議論の流れ
議論に入る前に、データを見る限りではパラサイトシングルの数は増えているとは言えないのではないか、データのない時代からパラサイトシングルに相当する人は一定数いたのではないか、いう指摘があったが、パラサイトシングルは増えているという前提のもとに話しあってもらうことになった。
論点に対しては、F班の考察以外に、家庭内での父親の威厳がなくなりつつあること、地元で就職し親元を離れる必要がなくなったこと、自立していないことを恥ずかしいと思わなくなったこと、社会保障が不安で生活を親に頼っていること、女性が仕事と育児を両立できる社会状況にないこと、フリーターやニートの増加、などがパラサイトシングル増加の原因として挙げられた。
その後、パラサイトシングルといわれる人はいわゆる「団塊ジュニア」の世代であるからという意見が出た。これは、彼らの親である「団塊の世代」の人たちは、就職する際に農村から都会へ出て行ったため、パラサイトしたくてもできない状況だったが、その子どもである彼らは、親の家にいるまま就職できる初の世代なのではないか、ということである。また、昔から都市部ではパラサイトできる状況にあった人たちはパラサイトしていたのではないか、という意見も出た。これらの意見は、パラサイトシングル増加の原因を状況的・構造的要因に求める考えと言える。他にも、構造的な要因として企業が労働者に求める技術の高度化が、若者の失業率の増加に繋がっているのではないかという意見も出た。
文化的要因については、若者の就業の趣味化が進み、自分探しをすることが良いこととされ、自分にあった仕事が見つかるまでは親に依存する傾向が強まったのではないか、という意見も出た。
そこから、パラサイトシングルを生み出す構造的要因についての議論と、文化的要因についての議論を分けて考えたほうがよいではないかということになった。しかし、二つの要因は絡み合っており、要因については出尽くしたのではないか、という意見があったため、パラサイトシングルを減らすためにはどうしたらよいか、について話し合うことになった。
この点に関しては、不況を回復しなければパラサイトシングルは減らない、との意見が出たが、それでは経済の話だけになるため、最近の親子関係の変化に関連させて文化的側面から話し合うことになった。しかし、そこで時間になり議論は終了した。
6.感想と反省
パラサイトシングルが増えているというデータが不足しており、スムーズに議論に入ることができずに時間切れとなってしまったことは残念だった。また、パラサイトシングルの分類を行っていれば、パラサイトシングル増加の要因の二つの側面とそれらの関係をもっと深く話し合えたのではないかと思った。
しかし、話し合いでは活発に意見が出て、パラサイトシングルを生み出す構造的要因など、新たに気付かされる点が多かったことは良かったと思う。
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