平成13年度 前期
【第11回:7月6日】
※ パース系記号論の展開(1)
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オグデン&リチャーズ『意味の意味』(1923)
[...]言語が思想におよぼす影響によりひき起こされる種々の困難を、直接に論議しようというのが執筆の動機である。 象徴学は言語およびすべての種類の象徴が、人間生活に対して持つ役割と、とくにそれが思想に及ぼす影響とを研究するものである。それは物事に省察を加える際に象徴がわれわれを助けたり、また妨害したりする様をとくに抽き出して研究題目とする。象徴 (Symbols) は指示し (direct) 組織し、記録し伝達するものを記述する場合にも、他の場合と同様に、思想 (Thoughts) と事物 (Things) とを区別しなければならない。 指示され組織されるものは思想(われわれは以下これを指示
referenceと呼ぶ)であり、記録され伝達されれるのもまた思想である。[p.54] 思想と象徴との間には因果関係が支配する。われわれが談話に用いる象徴体系は、一部はわれわれの行なう指示により、また一部は社会的、心理的要因──つまり指示の目的や、われわれが象徴によって他人に与えようとする効果や、われわれ自身の態度──によってひき起こされる。人の話を聞くとき、象徴はわれわれに指示活動を行なわせるとともに、事情により多少の差はあろうが、話者と類似の行動や態度をとらせる。[p.56] [...]
さきに例証した種々の種類の記号場を考察すれば、人々が相互伝達用として、また思想の道具として用いる記号は、特殊の位地を占めることが分かる。これらを明瞭な名称のもとに一括すれば便利である。われわれは語・語の配列・心象・身ぶり・それに絵画または物まね音声のごとき表示等の一切を象徴と呼ぼうと思う。象徴が無数の、予想もつかぬ方法で人生および思想に及ぼす影響はまだ十分に認められていない。[p.66] Ch. W. モリス『記号理論の基礎』(1938)
1 記号学と科学
記号学 (Semiotic) は諸科学に対して二重の関係を持っている。つまり、それは、諸科学の中の一つの科学であり、しかも諸科学の道具である。科学としての記号学の意義は、それが科学の統一への一歩であるということにある。なぜなら、記号学は、言語学、論理学、数学、修辞学および(少なくともある程度は)美学のような、記号の特殊科学に対して基礎を与えるからである。[p.4] 2 記号の本性
あるものが記号として機能している過程を記号過程
(semiosis) と呼んでいいだろう。古代ギリシャにまでさかのぼる伝統の中で、このような過程は次のような三個の(ないしは四個の)要素を含むものとみなされてきた。記号として作用するもの、記号が指示するもの、およびある解釈項への効果。そしてこのような効果があるから、当該のものはその解釈者にとって記号なのである。記号過程におけるこのような三個の成分はそれぞれ、記号媒体
(sign vehicle)、指示対象
(designatum)、解釈項
(interpretant) と呼んでいいだろう。[p.7] 記号過程という三項関係の三個の相関項(記号媒体、指示対象、解釈項)によって、多くの他の二項関係を抽出し研究できる。たとえば、記号と記号を適用できる対象との間の諸関係を研究することができる。このような関係は記号過程の意味論的次元 (semantical dimension) と呼び、‘D sem’という記号化をすることにする。そしてこの次元の研究を意味論
(semantics) と呼ぶ。あるいはまた、研究の主題を記号と解釈者との間の関係にすることもできる。このような関係は記号過程の語用論的次元 (pragmatical dimension) と呼び、‘D p’と記号化する。そしてこの次元の研究を語用論
(pragmatics) と名づける。[p.12] 2 記号学
[cf. p.127]
------------------- 【参照&紹介文献】
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