|
ソシュールは言語学を含む来るべき記号の学問として《記号学》を構想したが、ソシュール自身は言語記号以外の記号について「記号論」を打ち立てたわけではない。その後、言語記号以外の分野で記号論にいち早く挑戦したバルト(cf.『モードの体系』:Roland Barthes, Système de la Mode, Seuil, 1967:分析自体は1957-1963年に行われた)は、自らの経験から、非言語的領域の対象を分析するにしても言語を媒介することなしには行なえないと実感し、記号学はソシュールが提唱したように言語学を内包するのではなく、逆に記号学を含む言語学が必要であろうとした(cf. Communications 4, Seuil, 1964, p.2)。ただし、バルトがいう言語学とは従来の言語学ではなく、trans-linguistique であり、いわば言語学をこえた「超言語学」であるため、「超言語学 > 記号学 > 言語学」という図式が成り立つ。 そこに「記号論」を介入させれば、超言語学を内包するものが記号論であると言えなくもなさそうであるが、ここでは、バルトのいう「超言語学」こそ「記号論」ではないかという観点から、「記号論 > 記号学 > 言語学」と整理しておこう。
|