平成13年度 前期
【第9回:6月22日】
※ 記号論の源流 II:パース(3)
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パース『パース著作集2 記号学』
1 類似記号と低類似記号 (Hypoicons)[p.31〜]
[2・274](1903-2d) (1902) 記号ないし表意体 (representamen) とは、その対象と呼ばれる第二項と真正の三項関係を結ぶところの第一項であるが、解釈項と呼ばれる第三項がその同じ対象と同じ三項関係を結ぶようにしむけることができるようになっている。二項関係の複合という形ではなくて三個の項が結合されている場合その三項関係は真正 (genuine) である。こういう訳で、解釈項 (interpretant) つまり第三項は対象とただの二項関係を結ぶことはできず、表意体自身が結ぶのと同じような関係を対象と結ばなければならない。[...]記号というのは心的な解釈項を持つ表意体である。
2 真正の指標記号と退化した指標記号[p.37〜]
[2・283](1903-2d) (1902) 指標記号あるいはセーム(σημα)というのは、それが固体的な二次物であるということにその表意的特性の本質を置いている表意体のことである。この二次性が現存的な関係 (existential relation) であれば、指標記号は真正である。この二次性が関連 (reference) であれば、退化的 (degenerate) である。
3 象徴記号の本性[p.43〜]
[2・292](1903-2d) (1902) 象徴記号 (symbol) というのは、その解釈項を規定する規則であるということにその表意的特徴が存在するような表意体である。単語、文、書物、その他の習慣的記号は象徴記号である。われわれは、『人間』という単語を書いたり発音したりする、という言い方をする。ところが、発音されたり、書かれたりするのはそのレプリカ (replica) つまりその単語の具体化されたものに過ぎない。単語そのものは実在 (real being) を持っているが、現存性 (existence) は持っていない。実在の本質は、諸々の現存者がそれに従うだろうという事実にある。
4 記号[p.49〜]
[2・303](1901-6) (1902) 【記号とは】何か他のもの(解釈項)を規定して、自分の場合と同じやり方で、自分のかかわっているもの(対象)にかかわるように仕向けるもの。次にこの解釈項もまた記号になるといった具合に無限に続く。【cf.「2・228」】
5 指標記号[p.50〜]
[2・305](1901-6) 【指標記号とは】対象との類似性や類比によるのでもなく、また対象がたまたま持っている一般的な特性との連合によるものでもなく、一方では固体的な対象と、他方ではその人によってそれが記号として役立つ人の感覚や記憶との(空間的なものを含む)力動的関係 (dynamical connection) を持っていることによって、その対象を指示するところの記号あるいは表意体のこと。
6 象徴記号[p.53〜]
[2・307](G-1901-6) (1902) 【象徴記号とは】習慣が自然的なものにしろ、規約上のものにしろ、さらに元々その選択を支配していた動機にも関係なく、記号として使用され理解されているという事実によってのみ、あるいは主にそういう訳で記号になっているもの。
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【参照&紹介文献】
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